東大テクノサイエンスカフェ参加レポート テーマ「合気道×力学」 |
2011年7月7日(木)
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東京大学大学院工学系研究科・工学部では、 “工学の魅力を伝える”活動をされています。
その魅力に触れる場として、東大テクノサイエンスカフェを開催されました。 今回のテーマは「合気道×力学」でした。 その模様をご報告いたします。
日時:平成23年7月3日(日) 10:00-12:00
場所:東京大学本郷キャンパス 工学部11号館1F 講堂 講演・実演:筋活動解析の手法を用い、合気道 の技の秘密にせまる 機械情報工学科 中村仁彦 教授 システム創成学科 木村浩 准教授 (合気道準師範) 参加者:桑原(記)、鈴木専門指導員 ITCクラブ生徒会員 2名 東大テクノサイエンスカフェ参加レポート(1)
記:ITC会員 山本
前 1.合気道とは・・・・・・木村准教授
2.合気道の研究・・・ 中村教授 後 1.合気道を力学で見た様子 木村准教授は原子力と社会を担当 中村教授は人間工学を担当 合気道 木村先生:合気道とは・・・ へその部分を中心として、鉄板を作る。 人間の体には自然な力がある。 立つ→いろんな力を自然に作っているため、すぐに疲れたりはしない。 合気道の服はなぜブカブカなのか? それは相手に技を盗まれないため。 (画像説明) 背骨をS字のようにすると後ろに倒れない。 全体を使うと、ビクともしない。 この場で披露された技が21条 技にあるイナズマ切りは背中と腰の部分を使っている。 人間工学とロボット ロボットのモータは6個あると十分だが、7個あると余分になってしまう。 例)宇宙ロボット 骨の数: 約200個を約50個のグループとして扱っている 筋の数: 989本のワイヤーとして表している カメラの数: 10台 フォースプレート: 3枚で18成分の力を計測 筋電計: 16個を体に取り付ける カメラで見るためのマーカ: 35個を体に取り付ける 測定結果を数学により表している。 1.押されると腕の上の筋肉が使われている。 2.引かれると下の筋肉が使われている。 ↓ 同時に腕の筋肉が使われている。 体にはしましまの模様が表されている 骨と骨の間の神経である 腕と足は縦しま模様 腕は骨を通し、血液で活きている 約600個の筋肉を使っている 筋肉は、どのようなカロリーを出すか? 脳→脊髄→筋肉→脊髄→脳
まとめ;コミュニケーションは話すことだけではなく、体や脳を使う。
東大テクノサイエンスカフェ参加レポート(2)
記:ITC会員 小松
合気道と力学。一見関係のない二つの学問は、今回東京大学理工学部が一般向け
に行った東大テクノサイエンスカフェと呼ばれる講習会でつながることになった。コンセプ
トは、力学で合気道の動きを見ると言うものだった。正確には合気道で使われて
いる筋肉を目で見ると言うものだ。
カフェの前半と後半に分かれて行われた。特に前半は二つに分かれていて前半の 前半は木村准教授による合気道技の実技演習が行われた。印象的だった言葉があ る。それは「形が力を決める」言う言葉だ。それについてこんな例えを見せてく れた。 例)正座する時のバランスの話。 我々は普段そんなに正座などする機会はないかもしれないが日本古来の座り方で そのルーツは実は武士の喧嘩を予防するためであるらしい。そんな正座にも良い 座り方があると木村准教授は言った。普通に正座をすると体の重心が後ろに行って しまいがちだが実はこれでは軽く押されただけで倒れてしまう。それは体重を主 に膝と足のつま先から甲の部分の二点で支えているからだ。土踏まずの上に座っ て背筋を伸ばしてやると見事に体重は後ろに寄ってしまい押されただけで倒れて しまうのだ。そこで背筋をS字に持って行くイメージで重心を前に持っていくとど うか。重心が前に行くので当然倒れにくくなる。 このS字は、何かと合気道の世界では力をあまり入れることなく動きを止めること ができる要素だと言う。動きが止まってしまうと試合の時相手が技をかけにくく なるのだ。 前半の後半は、中村教授の自分の研究してきたテーマについてだった。開発され たロボットの腕を見せてくれた。まず、見せてくれた映像には8個のモーターを 使った腕がでてきた。動きは非常にゆっくりでボールをつかみ移動させる単調な 動きだ。しかし、8個のモーターのおかげで人間にはできない動きができるのだ 。8個のモーターの数=関節なのでそれだけ多彩なうごきができるのだ。私は、 そこにこの開発の意義があると思った。人間にできない動きを機械が代わりに行 うのだ。
次に見せてくれた資料は宇宙で使用されることを前提として開発された腕だった
。しかし、こちらはなんとモーターは二つしかないのだ、それでも多彩な動きが
できるのは、特殊な動力を伝えることができる装置のおかげだった。
その装置はこんな構造をしていた。中核となるのはボールのようなものでそれを 4個の車が支えている。上部の車を北極点として赤道、南極と分かれている。北 極の車を動力源とし中央のボールを駆動し必要に合わせて赤道、南極の車をボー ルに押し当て動力を得て必要な動きをさせる仕組みとなっている。ちょうど私は マウスを想像した。 また、こんなロボットも開発されているので追記する。 8台のカメラで一人の人間を撮影しその映像を元に数学による確立計算で対象が どのような動きをしているかを判断しロボットがその動きを真似る。また、今回 紹介してくれたこの実験は、画面で仮想の敵との対戦も可能だと言うのだから子 供ウケもとても良いことだろう。いつも、便利なもの、楽しいものには何かと最 先端の技術が使われている事実を改めて感じた。こんなユニークなロボットが現 在では開発されている現在人のように動き考えるロボットができるのもそう遠く ない未来のことではないかと思う。また、中村教授は最後に意味深げな言葉を私 たち傍聴者に提示した。「人間の身体とロボットの”こころ”」深い意味は私な どには分からないがこの言葉からは、中村教授の己の研究に対しての熱意が籠め られている様な気がした。 後半
カフェの後半からは合気道技の分析の映像の視聴が始まった。映像には木村准教授
と助手の方による演技の様子が写されており後、その様子を数学的計算による結
果をもとに作られた映像に切り替わった。具体的には、構えの姿勢をとる木村准教授の腕を助手の方が押したり引いたりしているところだ。この映像を見る前、木村准教授はあまり力を入れている感覚はないと発言した。しかし、映像を見た時、
思わず苦笑してしまったあたり、思ったより力が入っていたのかも知れない。
映像は中村教授によれば体の電気信号を特殊な機械で測定している。16個の 筋電計と筋を989本のワイヤーで再現する。骨は糸で釣ったようなモデルでその他の筋肉、 内臓類の重さを考えずに計算した結果をある一定の力が加わったところを色を付 けて力が働いた方向に矢印で表示し分かりやすくしたものと言うことだ。 また、この時、そのモデルの重心を知るために白い小さな丸で印を付け、マジックミラ ーと呼ばれる機械で床から体に受ける直接の力を測定し紫色の矢印で表示した。 今回は、対象の動く幅や実験内容を考慮しマジックミラーは複数使用したと言う ことだ。映像自体は3Dの色つきの理科室にある人体模型のイメージだ。 実際に映像を見てみると人間は股間辺りに重心があるらしいことが分かった。通 常時、床から受ける力はその重心まで届き運動をすると肩のほうへ力が抜けてい くのがみえた。私は力が加わる重心の位置がそこにあるから腰の悪いひとが出て くるのかと思いながらその映像を見ていた。その他映像からは力を加えられた腕 には加えられた力とそれに反発する力の様子がハッキリと見て取れた。確かに力 が腰から肩、肩から腕へと加わっていて確かに結構な力が入ってしまっている。 次に見たのは木刀を使った演技で、稲妻切りと呼ばれる名前にインパクトといろ いろロマンのある技だ。動きとしては、木刀を上から下へとただ振り下ろす素振 りではなく、まさに稲妻のように3回ギザギザと切り込みを高速で入れて行く技 になる。
今回の技は映像からの結果は、私は面白いと思った。なぜなら、あれだけ高速技
を繰り出しているにも関わらず殆ど腕の力は使ってないのだ。代わりに背骨は大
きくうねりある種のS字を作り腰から膝、太ももの辺りに色が付いたのだ。つまり
腕は使わず腰のひねりによって高速で木刀を三回切りつけたことになる。イメー
ジとしては体を振り木刀を動かすイメージになる。
まとめ
講演会の内容は合気道を見るであるが、何も合気道だけでは無いのである。日常
生活で使う動きをみることができれば、上手な体の使い方も見えてくるはずだ。
特に今回の講演会の研究内容は、まだまだ研究途中の段階でもう少し時間がたて
ば更なる進歩、たとえば今回は考えなかった重さや数学的な観察とは違う物で見
ていくことができるかも知れない。その時の結果は今回の結果とどこまで重なる
のか何処が変わったのか、非常に興味の尽きない研究だと思う。これからの進展
に期待したいと思う。
東大テクノサイエンスカフェ参加レポート(3)
記:ITC会員 桑原
内容:前半では、中村教授と木村准教授の講演、後半は、中村教授と木村准教授のパネルディスカッション。
合気道で、使用されている筋力の使われ方を、数学の計算を使用して、最先端技術を利用した解析実験の報告を、聞かさせて頂きました。 まず初めに、合気道について木村准教授により講演がありました。なぜこの実験に、興味があったかと言うと、「合気道と力学を、結び付けたら面白いと思った」・「科学的に筋力の伝わり方の解析が、出来たら面白いと思った」事が、理由でありました。この実験の素晴らしい所は、筋肉の解析を知ることにより、筋肉の構造の理解を擦る事が出来るので、自分自身の修行の効率を上げる事が、出来たと話されました。 木村准教授は、日頃から生徒達に対して、『合気道』を中心に物事を教えていると話しました。その理由は、一昔前は、『殺人術』と恐れられていた武術ではありますが、『合気道』には、『タンデン』という体の重心箇所があり、そこを中心に動くと、何事にも安定して行動できる・重心の真中で力を吸収することで体を安定する事が出来、なおかつ何事にも動じない精神力が養えるからでした。そして合気道を、学ぶ上でとても大切な事は、『形が決まれば力が、生まれる・構造が力を生む。』という事と、『相手の体の状態を理解する』ということでした。木村准教授は、相手とのコミュニケーションを上手く取る手段としては、最高の武術である事を教えて頂きました。 重心を前にすると背筋を伸ばす事が出来、多少の外力が加わっても崩れません。
次に、中村教授による『ロボット』についての講演を聞かせて頂きました。ロボットアームに使用するモータの数は、数十年前までは、7個~8個のモーターを使用してロボットアームを制作しました(当時は必ず6個無いと動かせなかった)。アーム制作の目的としては、『人間にとって不可能な作業をロボットで行う』事でした。技術の進歩により、現在は2個のモータで間接を動かせる様になりました。
中村教授が、強調して話して頂いた説明の中で、とても印象に残った言葉がありました。それは、『人とロボットが、コミュニケーションをすることによって今後のロボット開発の発展に繋がり生活が豊かになる』という事でした。 7個のモータを利用したアームロボット 新技術の開発によってロボットアームが進歩した
後半になりまして、今回のメインテーマであります中村教授と、木村准教授によりますパネルディスカッションを、聞かせて頂きました。内容は、16個の筋肉に筋電計(最新技術を駆使した)を装着し、「合気道の形」を演武した時に筋肉に伝わる電気信号と、床から伝わる衝撃力をフォースプレート(3枚で18成分の力を計測する)で数学的に計算し、その結果をモニターに映像解析する内容でした。映像は、約200個の骨を約50個のグループとして扱い、筋を989本のワイヤーとして表すことにより、力が加わった箇所の色が変わり、そして力の方向に矢印が表示され良く分かりました。
この映像を見させて頂き、本当に重心(股関節あたり)から力が伝わっている事がわかりました。例えば、手に力を加えても、手にはあまり力が加わらず、重心(股関節周り)を中心とした箇所に負荷が掛かっていました。そして肩の方から上向きに力が抜けている事も分かりました。 木刀にて素振りの映像を解析
今回東大テクノサイエンスカフェに参加させて頂き、もっと人間の事を理解しないと、今後の技術発展に繋がらないと感じました。今回の実験では、まだ未知な要素が沢山あると中村教授が言っていました。そのためにはもっと生理学を学ぶ事が必要であるとも言っていました。まさにその通りだと思いました。
現在の社会では、利潤を追い求め過ぎています。もっと人間に深く関わり、そして人間を大切に出来る技術開発を目指したいと考えました。 東大テクノサイエンスカフェ参加レポート (4)
記:専門指導員 鈴木
東京大学大学院工学系研究科・工学部では、 “工学の魅力を伝える”活動をされています。
その魅力に触れる場として、東大テクノサイエンスカフェを開催されました。
機械情報工学科 中村研究室がロボットや「脳を創る」研究の一環で開発した「筋活動解析」の手法を用い、合気道準師範・システム創成学科准教授 木村浩先生による合気道実演を交えて、「合
気道の技」の秘密を解析・考察されました。
①合気道の経験がない人にも分かりやすく体の使い方を説明して頂きました。丹田 (重心)と構造(形)が力を生み出すことを改めて学びました。構造と聞くと、すぐに機械や道具に目が行ってしまいますが、人の体も本当に上手くできていることを感じました。 ②中村教授の長年に渡って積み重ねられた研究を知ることができました。 ロボット・アームだけでも、様々な機構技術と数学の力で作動していることを知り、大変勉強になりました。 その研究の先には、例えば重い荷物を持っている人を察知し、手を差し伸べるロボットが作れることを知りました。 人の気持ちを理解するロボットのお話しは興味深く、日常生活の中で人をサポートする、とても夢のある楽しみな研究だと思いました。
この他にも、分析システムの理論、解析映像など、興味の沸く映像をたくさん見せて頂きました。
理論だけを見ると難しいテーマですが、小学校の高学年から高校生、一般の方でも、見て、聞いて楽しめる内容にまとめられていたと思います。 以上 |