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講演の専門指導員のまとめ
2010年6月10日(木)
記:鈴木専門指導員
ITC会員桑原先生担当の機械科3年生クラスの、5時限目に、視聴覚教室に教室を変え、アドバイザーが「人間機械系」を講義しました。内容をまとめ、感想を簡単に記します。
 冒頭、演題を「ウィキペディア」で検索。しかし結果は無し。私はわくわくしながら、待ちました。次にYahoo!で「人間機械系 井口雅一(敬称略)」を検索。ずらっと記事が表示されました。講師は「人間機械系や人間工学、ヒューマンインタフェース、マンマシンインタフェースは大変難しいテーマです。皆さんがこの言葉を覚え、パソコンとネットを使い検索し、好きな資料を読んでください。ネット情報は間違いだらけです。ITCの掲載記事すら一般常識と異なる記載があります。違いは筆者の信念です。複数読み、各自が真実を考えてください」と続けました。なお、井口雅一先生は講師の機械科学生時代の恩師です。日比谷線のせり上がり脱線、西宮の脱線事故、などの原因調査委員長や、宇宙開発委員会、自動制御学会会長も歴任した、人間工学と車両工学の専門家です。
 コンピュータを志していた講師は二十歳の時、情報講座が大学になく、人間工学車両工学研究室に進学。歓迎コンパで、井口先生は新幹線の話をしたそうです。「システム工学の本質は説得工学である」「新幹線の運転室の設計で一番難しかったのは運転手の操作。自動化なら簡単。運転手が居眠りしても問題がない設計が難しい」。意外な答えでした。「人間は眠るもの、間違うもの、誤動作させるもの。誤操作の危険回避が一番大切」と学んだそうです。人間はミスを犯す生き物です。予測出来ない運転手の行動を対策して、40年以上、新幹線は制御システムの大問題は発生していません。
 スペースシャトルは先輩の吉本名誉教授の得意分野。一番危険なランディング時、船長は安全なオートパイロットをオフにし、マニュアル運転するそうです。自分の命が掛かった時でも、完璧なシステムが傍にあっても、人は機械に頼らず、自分に頼ります。各自が自分を信じていると理解する事が仕事をする上で一番大切な心です。しかし、教室では、先生の言葉を信じて聞きましょう。そしてキーワードをメモしましょう。後で、自分で調べましょう。信じて学び、自分で考える、が皆さんを成長させてくれます。学びて思うのだと思いました。
 講演の中で大切だと私が思った事を以下に箇条書きします。講演のほんの一部です。
質問されたら必ず答えることが礼儀であり、これは社会人の基本である。
授業は寝てもいい。自分の成績が悪くなるくらいで済む。しかし、実社会ではひとつのミスが多くの
  人命や生活を脅かす。居眠りは絶対にやめよう。先生が起きろと言うのは、皆さんにこれを教えた
  いからである。
未来を予測する一番良い方法は過去を学ぶことである。過去の歴史を学ぶことで未来を予測でき
  る。産業革命や大英帝国の繁栄は16世紀、欧州の後進国、イギリスが実現し、短期間に世界を征
  覇。理由も学ぼう。一方、今は情報革命時代。過去の革命は多くの人間が行動し、達成できた。情
  報革命は一人できる。個人が世界を取り込んで作り上げられる。その実践を通じて未来が見えてく
  るだろう。
戦艦大和は当時の最先端技術を集約した設備やシステムだった。そして優れた個人技を持つチ
  ームワークを理解した乗組員がいたから、圧倒的な武力を持つ敵と戦えた。人間機械系を学ぶ最
  適な例題だろう。
未来に向い「ここをこう変えた方が良い」と思い、口に出すと、問題児と言われるだろう。それで結
  構。良い会社は問題提起してくれる若者を必ず育てプロにしてくれる。
中国経済が目覚しい発展を遂げている。日本経済を抜くことは間違いない。しかし、中国の工場に
  生産機械を輸出し、日本は経済を維持し、国民は良い生活ができている。携帯電話やテレビの輸
  出ではなく、機械設計とコンピュータが渾然となった複雑な生産装置が国民の生活を支えていると
  言える。
 今回の短い講義で、生徒さんは機械の根幹だけでなく、様々な教訓や社会勉強ができたのだろう。機械は冷たい物である。しかし、それを動かし生活に役立てているのは人である。人の温もりが込められてこそ、機械は真価を発揮する。機械設計を得意として発展し、国と国民を維持してきた日本の、次世代を担う若者はIT技術と機械設計の本質を学んで欲しい。一番重要なことは発想力。そしてチーム力。そのために、情報を操作するITの知識がある。機械科で生徒さんには難しい内容だっただろうが、このテーマとすれば、分かりやすい講演だった。一部の言葉を覚え、検索し、勉強し、ITCで実践して欲しい、を纏めの言葉としたい。